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大江戸鳥暦



たまには本の紹介を。

『大江戸鳥暦-川柳でバードウォッチング』
松田道生
1999年河出書房新社
ISBN 430901321X

絵画やさまざまな記録によって江戸時代の江戸で見られた鳥が浮き彫りになっている。
当時の江戸は水路や林、草原も多く、鳥にとってはよい環境だったようだ。
また、ツルやガンといった現在の東京ではありえないような鳥たちも見られていた。

筆者は江戸の鳥を切り取る手段として川柳を選んだ。
大衆文化である川柳に登場する鳥たちを見ることによって、江戸っ子たちがどのように自然と接してきたか、生き生きと描かれている。
ただ、川柳は当時の文化的背景、古典、洒脱のセンスに同調する感性など幅広い知識とセンスが要求されるので、なかなか難しい。

本書はこの難しい川柳に若干の解説を加えつつ、川柳を通じて描かれる鳥の生態を鳥のことを知らない人にも分かるように描いている(と思う)。


最初に描かれるのは、カラス。
「憎まれぬのは元旦の明烏」
やっぱり、朝早くから大声で鳴くカラスは江戸の人たちにもうるさがられていたようだ。

そのあと、ウグイスやウソなど季節で追って紹介される。

ホトトギスは最も歌に詠まれる鳥として紹介されている。
韻が踏みやすい、五文字であることなどが理由のようだ。
「時鳥二十六文字は案じさせ」
といったぐあいである。
ホホトギスの初鳴きを競って聞いたり、ユニークな托卵の習性など江戸の人たちにとっては非常に身近な鳥だったようだ。

秋の深まりと共にガンやハクチョウがやってくる。
数十年前までは東京にもガンが飛来していたそうだ。
「夜をのばし昼をのばす雁の声」
ガンがやってきたら夜が長くなり、ガンが去れば昼が長くなる、というわけ。

草原や水田が豊かだった当時の江戸にはツルもやってきた。
今では北海道でしか見られないタンチョウもいたそうだ。
ツルはもちろん日本人にとって珍重された鳥なのだが、それゆえ、庶民にとっては「見ることさえ許されない」鳥となってしまった。
ツル殺しは一家死罪、一族遠島というとんでもない重罪だったそうで。
ツルを捕らえ、天皇に献上できるのは唯一将軍の特権とされてしまったからだ。
当然ツルを食することが出来たのは極々一部の上層階級だけ、ということになる。
皮肉からか、こんな句がある。
「壽運拙く献上のツルとなり」
ツルはもちろん瑞鳥なわけだが、その割には運なく捕らえられてしまったねえ、と。

そして、現代でも議論を巻き起こす「都鳥」。
「名にしおば いさこと問はん 都鳥 我が思ふひとは ありやなしやと」
いわずと知れた伊勢物語。
この都鳥はユリカモメ(カモメ科)なのか、ミヤコドリ(ミヤコドリ科)のような別の鳥なのかの議論は現代人だけでなく、江戸っ子たちの間にもあったようだが、概ねカモメ説が有力だったようだ。

ユリカモメ
ユリカモメ

ミヤコドリ
ミヤコドリ

ただ、あれこれ議論するのは野暮だったみたい。
そのうえ、隅田川吾妻橋で見るカモメのみが「都鳥」だったらしい。
「鴎見てあれにしておけ都鳥」
「そくたいで見るがまことの都鳥」(そくたい=衣冠束帯。貴族(業平)の衣装)
「隅田川鳥さえ見れば都鳥」



鳥が文化の一員として身近であったこの時代がうらやましいと思える一冊でした。
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紅葉修

Author:紅葉修
もみじおさむと読みます。
趣味は鳥見、トンボ見、寺社巡り、ラテン語、ゲームなど。
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